指を使って数えていいの?
- 家庭教師のMIC
- 2024年7月26日
- 読了時間: 3分
児童生徒が指を使って数を数えているのを見て、「頭の中で計算できないの?」と不安に思う保護者の方も少なくないようです。やはり暗算している方が格好が良く、安心できるからでしょう。
実際に暗算ができていれば、頭の中で数学的概念を理解できている証左ですし、計算能力も高いことは確かだと思います。

でも、私は指を使って数えることは、特に問題ないと思っています。
その理由は、以下の通りです。
①繰り上がりの概念は、難しい。
世の中で当たり前に使われている、10で繰り上がる10進数を、大人になると「できて当然」と感じています。
しかし、そもそもこの「繰り上がる」という概念は、子供にとっては非常に難しいものです。
例えば、「車が10台停まっている」という表現です。「10」というのは、十の位が1個、一の位が0個です。
では、この際に10台に固まった車が1台(?)あり、1台ずつの車は1台もないのでしょうか。
そうではありません。1台ずつの車が10台あるのです。なのに、十の位で1台、一の位で0台です。たとえ離れて停められていても。
ですから、繰り上がりの概念を理解するのは、簡単ではないのです。
しかも10で繰り上がりになるというのは、単に健常者の指が左右合計10本であるからという理由でしかありません。
しかしこのことを逆手に取れば、指を使って数えているうちに、指が合計10本あるから、10で繰り上げることにしよう、という決め事を学ぶこともできるはずです。
②10進数を使っているのには、数学的な合理的理由はない。
なぜ10進法が採用されているのかというと、実はそこに数学的な合理的理由はありません。
むしろ、12進法や60進法の方が約数が多いので、数学的には利用しやすいです。実際に過去にはこれらを基軸にしていた文明もありましたし、現在でも1年は12か月ですし、十干十二支は60年を一回りとしていますから、還暦のお祝いもあります。
ではなぜ10進法を使うかと言えば、それは先に触れたように、健常者の指が左右合計10本だからです。
つまり、10進法を当然視している算数も数学も、その根源は指を折って数えることに始まっています。
ですから、どんどん指を使って数えれば数えるほど、算数や数学に慣れていきやすくなるではないでしょうか。
③抽象的な概念を具体化できる。
①、②で見てきたように、10進数を使っていることには、数学的な合理的理由はありませんし、そのために10で繰り上がるという概念は、特に小学校低学年の児童には非常に難しいものです。
そんな難しくて非合理的な10進数を、最初から頭の中だけで考えれば、児童生徒が混乱してしまってもおかしくはありません。
そもそも数字は曖昧な抽象的な概念です。外国語を学んでいると分かりますが、順序通りに外国語で数字を言えるようになっても、単独で「8」と言われたときにすぐに「8」と認識するのには、非常に時間がかかります。
その一方で、指を使って数えると、1つ1つの数を、視覚と触覚で数字を具体化できます。それを何度も繰り返していると、頭の中で指の動きを想像できるようになり、次第に暗算ができるようになっていきます。
以上のような理由から、指を使って数えることは、どんどんやって欲しいです。それを続けているうちに、10進数に慣れていき、さらに頭の中で暗算もできるようになっていくでしょう。
そろばんをやっている人たちが暗算に強いのは、同じ理由によるものです。頭の中でそろばんを動かすイメージを思い浮かべられるようになるのです。

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