「勝ち組」を作ったら、家庭教師は「負け組」
- 家庭教師のMIC
- 2020年4月4日
- 読了時間: 7分
更新日:2020年4月9日
新型コロナウイルス(以下「ウイルス」と略記)の拡大を受けて、今週末は宮城県と仙台市からも外出を控えるように要請がなされました。検査は結果を公表するまでに5日くらいかかっているようですので、実際にはもっと多くの人が感染しているでしょう(しかも無症状で…)。
パブでのウイルス拡散に目が行きがちですが、そもそもそこにウイルスを持ち込んだのが誰で、その人がどこからウイルスを貰ったかも不明です。したがって、すでに3月中旬には仙台でウイルスが拡散していたと思っていた方が賢明です。
ですので、今求められる行動は、自分も相手も感染しているかもしれないことを前提にした行動です。なにせ、8割は無症状ですから(致死率が高いウイルスなら、ここまで拡散はしませんでした)。マスク着用、手洗い励行、他人との物理的な距離の保持(1m以上)が大切になります。
一方で忘れてはならないのは、2019年の地球上の二酸化炭素濃度が過去最高になり、地球温暖化がますます進んでいるということです。昨年9月に始まったオーストラリアの森林火災は、今年2月にようやく収まりました。しかし、①炎、②二酸化炭素による地球温暖化への影響は計り知れません。
また、アフリカでの洪水と気温上昇により、サバクトビバッタが異常繁殖し、アフリカ大陸からアラビア半島を越えて、パキスタン、さらにはインドに侵入しました。すでに国際的な食糧危機が危惧されています(https://www.data-max.co.jp/article/34808?rct=international)。
さらに、今冬の暖かさが異常だったのは、日本だけではありません。ロシアのカムチャッカ半島でも熊が冬眠をしなかったことが報道されていました。
こうした地球の異常な暖かさは、海水温上昇によるものなのでしょう。海水温が上昇すれば、台風は大型化します。昨年よりも、より大型の台風が甚大な被害をもたらすことを覚悟していた方が良いようです(例えば、建売住宅が風で吹き飛ばされるくらいの)。これはバラエティ番組ばかりに出ている不真面目な「学者」ではなく、専門的研究をしている科学者の多くの考えです。
NHK BS等の専門番組を見たり、新聞や雑誌を読んで理解できたことですが、温暖化が著しく進行している現在にウイルスが蔓延したことは、必ずしも偶然だとは言えないということです。
感染症の専門家は17年前のSARSの時から、このような事態がいつか起きることは必然だと考えていたそうです。
その原因は、①乱開発により、人間が様々な生物に接触する機会が増えたために、ウイルスが突然変異して人間に感染する機会が増えた、②グローバリゼーションにより、ヒトとモノの移動の速度と量が格段に増し、元々の風土病が世界的な流行になる可能性が高まった、からだそうです。
その地球温暖化の問題と、今回のウイルス問題は実は根っこで関連しているようです。
そのカギとなるのは「格差」です。2016年のCNNの記事ですが、その時点ですでに世界の富裕層62人と下位36億人の資産が同額になっています。
現在は格差はもっと開いているはずです。なぜなら、①貧富の格差は乗数(掛け算)的に広がっていく、②その格差を是正する所得税や法人税を低下させる傾向が世界的にある、③そもそも、超富裕層はタックスヘイブンを利用して「合法的に」税金逃れをしている、からです。
労働者が一生懸命働いても、税金ばかり増えて豊かさの実感が湧かないのは当然です。超富裕層が税金で作られたインフラ等を使ってその利益を吸い取り、さらに肥え太っていますから。超富裕層にとってみれば、年収2000万円も200万円も大した差はありません。
それに対し、発展途上国がとった発展戦略は、自然環境の乱開発でした。その結果、①従来密接に接触することはなかった動物と触れることにより、ウイルスが突然変異してヒトに感染する、②地球温暖化を加速させる、ことになりました。
他方、先進国で行われた富の一極集中に対抗するカネ集めの一つが、インバウンド戦略です。LCCの発展を見ても分かるように、世界的に「規制緩和」が行われ、環境負荷を考えずにヒトの移動を加速化させました。
日本でのオリンピックやカジノ誘致もその一環だと考えてよいでしょう。しかしその結果、飛行機でのヒトの移動が多くなったことで、二酸化炭素が大量にまき散らされ、温暖化が加速しました(さらに飛行機乗務員の労働環境の劣悪化も)。さらに、多くの人が大した検疫も受けずにグローバルに移動していることにより、元々は風土病であったウイルスが世界中に広がることになりました。
また、これまで日本を含む先進国は、環境リスクを発展途上国に押し付けてきました。昨年突如プラスチックごみ問題が浮上したのは、それまで「途上国」であった中国がプラスチックごみの受け入れを拒否したからです。その結果、プラスチックごみのずさんな処理がクローズアップされ、①生物への影響、②プラスチックの溶解時に生じる地球温暖化を促進する物質への懸念が広まりました。
それだけでなく、昔からですが、先進国は発展途上国の弱みに付け込み、その国の環境規制を弱いままにして、廉価な部品生産を途上国に行わせてきました。中国のPM2.5問題は、日本を含む先進国にも責任があります。中国の独裁政治体制を利用し、環境規制を弱いままにして、廉価なサプライチェーンを形成してきたのですから。今回のウイルス問題が日本に波及する前から、日本の製造業が大打撃を受けていることからも、それは分かります。
超富裕層が環境を汚し儲けても(受益者)、コストを払いません。しかし、誰かが生命や生活でツケを払っています(受害者)。コストを払うべき人がコストを払っていない、という外部不経済の問題です。環境を汚した人は、その汚した分のカネを払っていません。それどころか、超富裕層は中間層の税金で作られたサービスを利用して稼ぎ、タックスヘイブンを利用して税金を払っていません。
実はすでに、現在の資本主義システムは限界に達していました。地球温暖化もウイルス問題も、その原因を突き詰めると、結局世界的な貧富の格差の著しい拡大という根っこに突き当たります。仮想通貨の出現やシェア経済の発展、ボランティアの流行は、「この社会はなんだか変だ」と思った人々の無自覚な行動によるものです。
ですので、今回のウイルス騒動が収まっても…というより、ウイルスは残り続けるので、ウイルスとの共生方法を見つけても、以前のような経済社会構造は維持できない、というよりも、維持してはならないのだと思います。
すなわち、「新自由主義」という、単純に言えば、何でもかんでも競争原理を取り入れれば問題は解決する、という考え方を止める必要が生じると思います。
その「競争原理」はあくまでも、人間の価値の一つである「カネ」に基づくものに過ぎませんから。そこで「勝ち組」や「負け組」を作っても、人類全体の幸福には繋がりませんでした。そのことは、今回のウイルス騒ぎで超富裕層が怯えていることを見ても分かります。
皮肉なことに、ウイルスが世界的パニックをもたらすことで、地球の自然環境はこの30年の内で、ヒト以外の生物にとって最も良いものに変わりました。このことが地球温暖化を少しでも緩和することを願ってなりません。
仮に、これまでの世界的な開発主義を持続するとどうなるでしょうか。そうすると、温暖化が進んで自然災害の危険性がますます高まる一方で、人類が常に新たなウイルスに感染し続け、そのウイルスが世界的に拡散していくのでしょう。さらに、温暖化で永久凍土が溶けることにより、数億年前の人類未体験の殺人ウイルスが拡散することも懸念されています。
ウイルスが蔓延している中で、スーパー台風が甚大な被害をもたらし、ボランティア無しで復旧作業を行わなければならない、という複合型災害の可能性も覚悟しておいた方が良いです。生じなければ、その方が幸いですが。
要するに、現在のウイルス問題も、近年の多発する自然災害も、「勝ち組」が「負け組」を顧みないことによって生じているということです。ですので、仮に生徒さんが、XX高校やXX大学に合格した、だから自分は「勝ち組」だ、などと思ってしまったら、社会自体が「負け組」になりますし、私自身がなにより「負け組社会製造機」になってしまいます。結局「勝ち組」も被害者になるので大騒ぎになっているのが、今回のウイルス問題です。
偏差値や収入で人を序列化する価値は確実に変わっていきます。その序列の中で何かに「なる」ことで満足する時代は終わっていくのではないでしょうか。狭い価値観にとらわれて何かに「なる」ことばかりに固執するのではなく、広い視野を持って何を「する」とか、自分が何を「見る」かも、これからの時代にとって大切なことです。
日本ではあまり聞かれませんが、世界的には2020年代は、地球を人類が住めるに適切な環境に維持できるかどうかの勝負の10年だと言われています。
学ぶ、ということは、そんな時代の変化に対応し、社会を作っていく力になります。

コメント