受験する大学を選ぶ際に大切なこと
- 家庭教師のMIC
- 2022年9月21日
- 読了時間: 4分
大学進学を考えている高校生の方々のほとんどは、大学を選ぶ際の基準に「就職」を挙げていると思います。
確かに、医師や薬剤師などの特殊技能(≒資格)を必要とする職種に就きたいと考えている人は、その道に進むには特定の学部に入るしかありませんから、その学部を目指しましょう。
しかし、漠然と「いい会社に入って安定した人生を過ごしたい」と考えて、「就職率」だとか「就職への強さ」で大学や学部を選ぶことには、「待った」と言いたいです。
「就職率」や「就職への強さ」を謳う大学は、「就職」を掲げて学生集めをしたいだけです。内実が伴っている大学は、「就職率」など掲げなくとも学生が集まるので、「就職に強い」などと宣伝しません。
さらに、大学は「就職率」を謳っても、就職後の離職率は調査しません(できません)。つまり、就職後の人生を保障してくれるわけではないのです。
加えて、よく「東証一部(東証プライム)上場企業に就職」という文句が誇らしげに語られます。しかし、「東証一部上場」(東証プライム)というのは、労働条件を示しているわけでもありません。どんな大企業とて、倒産することはあります。
また、その会社の現在の良い労働条件が将来に渡って保障されるわけでもありません。2010年代のメガバンクの凋落がその最たるものでしょう。また、AI革命に加えて、気候変動やコロナ禍の影響により、個々の企業の業績や労働条件は一変しています。そもそも世界規模で比較すれば、この30年間に日本経済全体が弱体化してきています。
なぜこのようなことを書くのか、というと、どうもまだ大学進学が、終身雇用を前提とした就職の考慮により決められている風潮が強いからです。一生安定でいられるのは、どの大学のどの学部なのか、というような。
しかし、そんな一生安定の状況というのは、誰も保障などしてくれません。そういう人生を歩めたら、しっかりと生活するという必要条件に加えて、偶然が十分条件として必要です。
例えば、交通事故で年間5000人以上が毎年亡くなっています。けが人だったら、もっと多いです。誰もが突然大きな障害を抱えたり死を迎えたりする可能性を抱えているのが、人生です。それに比べれば、就職先の企業が突然倒産するというのは、それほど驚くべきことではありません。
つまり、次の瞬間に突然に「安定した人生」の前提条件が崩れることは、誰にとってもあるわけです。ですから、就職はもちろん大切なことですが、それだけを考えて近視眼的になっていると、就職時の前提条件が崩れた時に、対応できなくなります。
ではどうするべきでしょうか。結局は今をしっかり生きて学ぶことに尽きると思います。なぜなら将来がどうなるかなど誰にも分かりませんし、何が役に立つのかも予測できません。「今役に立つ」「今賞賛されている」もの「だけ」にしがみついていると、将来役に立つものが何もなくなってしまう可能性とてあるのです。
その上でもう一度大学の進学先を考えると、無論偏差値や大学での教育内容も大切ですが、やはり自分が学びたいと思ったことを第一に考えるべきだと思います。
その際に、進学希望先の大学教員の本を読んでみることをお薦めします。現在は大学も様々な情報発信をするようになっていますから、実際に進学希望先の大学教員についての情報も入ってくるでしょう。そこで興味関心を抱いたら、ぜひともその大学教員の書いた記事や本を読んでみて下さい。
日本の大学教員は、教育をしたくて大学にいるのではなく、研究をしたくて大学に在籍しています。ですので、ほとんどが教育の専門家ではありません。ですので、その教員の「持っているもの」のうち、授業で「教えてもらう」ことから得られるものはほんの僅かに過ぎません。教員が「持っているもの」のうち、一番重要なものは、その研究にあります。
だから、高校生のうちに、気になった教員の本を読んでおき、「学び取る」姿勢で大学に向かって行って欲しいです。その方が大学受験への意欲もわきますし、大学進学後も学問へのモチベーションが湧きます。
さらに、「教えてもらう」という姿勢よりも「学び取る」という姿勢の方が、当然ながら大学4年間で得られるものは多いです。なぜなら、本当は自分の研究を見てもらいたがっている教員は、「学び取る」という姿勢の学生に対しては、授業の中でのものよりも深く面白いことを披歴してくれるであろうからです。
反対に、大学は「教えてもらう場所」だと思って受身な姿勢でいると、無駄な4年間(あるいはそれ以上)を過ごしてしまいます。大学は、自分で学び取りに行く場所であり、そうした積極的に学び取る姿勢を学ぶ場です。そうした姿勢というのは、就活でも就職後でも、さらには退職後でも、人生全般において生きてくるでしょう。
誰かに人生を保障してもらおう、と思いながら、偏差値ばかり見て大学受験をし、大学進学後も、「誰かに用意してもらった何か」をして満足していると、その「誰か」がいなくなったり、変節した時に、全てが崩れ去りかねません。
ですから、高校生のみなさんには、大学教員から学び取ってやる!という気概を持って大学選びをし、その目標に向かって学業に励んでもらいたいです。

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